ファティ・アキン監督"soul kitchen"

昨年の12/23にベルリンのプレミアム公開でこの映画を見ました。とても面白かったのですが、感想を書くのが難しい。よく組み立てられたストーリーかつ、シチュエーションで笑えるコメディだとか、個人的には、Auf der anderen Seite(そして、私たちは愛に帰る)よりもこの映画の方が大好きです、等々思いつくコメントは色々あるけれども、いざ何を日本在住の映画未見の人に伝えたいか、そう考えた時にどうしても言葉に詰まってしまう。

それはおそらく映画を配給したり宣伝したりする人の苦しみに近いものがあるのかもしれません。在独トルコ人二世、ドイツ映画等々ファティ・アキンにまつわる様々なキーワードが、送り手側の意識に余計なフィルタを付け加えてしまう様なかんじです。



ファティ・アキンはよく社会派と紹介されることが多いですが、オリバー・ストーンケン・ローチといったジャーナリスティック(?)な手法でアプローチしている、というよりかは、どちらかというと、タランティーノの様にサブカルチャー大好きなひとで、好きなことを徹底して追求した先に、映画があり、「社会派」とよばれるコンテクストが映画に載っている、という理解の方が正しい様な気がします。

映画をちゃんと見たことのある人間は、ファティ・アキンが描く主題は、カンフーだったり、イスタンブールの音楽シーン、そしてソウルミュージックのながれる熱いレストラン、そういった彼の好きなこと、興味のあることだと気付いていると思います。いいかえるとジャーナリスティックな手法というよりも私小説に近い。例えば、彼の映画にでてくる空港は、様々な出会いと分かれの場であり、人生の一区切りとしてのメタファーとして登場します。きっと彼はドイツとトルコを行き来するという日常の中で培われた感覚でこのことに気付いたんだろうと思います。今回のsoul kitchenもHeimatfilm、つまりはハンブルクという生まれ故郷を描いた映画です。彼らがどういう生活をハンブルクでしているのか、そういう皮膚感覚がこの映画にはある。

それはそれとして、Gegen die Wand(愛より強く), クロッシング・ザ・ブリッジとも同じく並んで、とってもご機嫌なサウンドトラックです。
今度こそ配給会社、宣伝会社の方はタワーレコードとかとタッグを組んで音楽方面からもプッシュして欲しいですね〜♪


ちなみに、以下のインタビューなのですが、

1:20前後頃、アダム・ボウスドウコスは自分のことを「ドイツ人」と言っている様だけど、正確には外国人(Ausländer)との対語となる(Innerländer)と言っている。ここら辺の微妙なニュアンスをきっちりと説明出来る様な状況でないと、又一から、ドイツに於ける外国人の労働問題、などという荒い議論に巻き取られてしまうのだろう、そう懸念してしまいます。

(ちなみにこのドイツ語訳はかなり荒いですが、同時通訳としての字数制限、また新聞という「大衆」を想定したメディアの性質上コアな問題に即座に触れることが出来ないのかな、とも思いました。)