『選挙』(想田和弘)
Berlinale(ベルリン映画祭)で幾つか見た映画の感想をアップ。
まずは第一弾、想田和弘監督『選挙』
2005年の一方で川崎市市議補欠選挙の自民党公認候補者"山内和彦"さん。彼に密着することにより、改革改革と言いながら保守的な体質で以て選挙戦を行っている自民党の外内部をきっちりとカメラに収め切っています。
監督のブログでもコメントされている通り、この映画は選挙を舞台にしつつ、政治性が非常に薄いです。というのも日本の選挙に於ける日常的な風景のみが収められており、山内さんご本人の政策議論など、彼自身をプロパガンダする要素が潔いと言っていい程無い。
それはおそらく、彼が筋金入りの政治家タイプではない、ということにもふんだんに関係しているかもしれません。この映画の中にあらわれる、いわゆる先生方のお顔と山内さんのひょうひょうとした人柄が本当に好対照でした。
映画を通して考えてみると良くわかるのは、如何に彼が自民党という組織に利用されていたか、という点だと思う。彼は、東大卒、某市議の推薦、この二つでもって市議補欠選の公募に受かり、川崎市宮前区のワンルームマンションに妻と二人居を構えました。しかしながら、その内実は、誰もこの選挙に立候補したくないが故の公募、自らを落下傘候補と親しい友人に打ち明け、諸先輩方のバックアップを受けつつも、ことごとく彼らに頭を下げるその様がすべてを物語っていたように思えます。その結果、彼は今年の4月に行われる川崎市議選には立候補しないそうです。
おそらくこの場合の政治とは、この映画をネタに、自民党の体質を批判したり糾弾したり(あるいはゆすったりや脅したり^^;;;)することを指すのでしょう。
個人的に印象的だったのは、
- (選挙カーでは)3秒に一回は名前を言え、と古参の人がアドバイスしていた事。
- 「体育会系」という言葉が"Army"と訳されていた事。
- そして、その惨状(?)が如何に軍隊的に見えた事か(ラジオ体操とか、鬼軍曹とか)...という事。
- 候補者のご夫人が「妻といわずに家内と言え」とアドバイスされていた事
- 候補者のご夫人が他の自民党員に「あなたは仕事をやめるべき」と言われた事を愚痴っていた事。
- なによりも3年間住んでいた川崎市宮前区が舞台だったという事...(笑
会場には立候補者ご本人と監督も見えており、終了時のトークはなかなか盛り上がっていました。マイクチェックをしゃべる前に必ずする、という山内さんの計算されたパフォーマンスは中々、と思ってしまいました。
監督さんご本人のブログのようです。
http://documentary-campaign.blogspot.com/
しかしまぁこのスレ荒れてますね...。